【Amazonプライム・ビデオ】本能寺ホテル―歴史ミステリーと思いきや

【Amazonプライム・ビデオ】本能寺ホテル―歴史ミステリーと思いきや

2017年に公開された、綾瀬はるか主演の映画です。2020/06/02現在、Amazonプライム・ビデオで視聴可能です。

織田信長が謀反によって命を奪われた1582年の「本能寺の変」は、日本中の人が知る大事件。謎も多く、「もし過去にタイムスリップできるなら、この日の本能寺に行ってみたい!」と思う人も多いのではないでしょうか。私は思います。

そんな空想を現実として描いた映画であるものの、「歴史映画」だと思って見ると少々もの足りないと言わざるを得ません。

この映画の主題は、実は綾瀬はるか演じる主人公・繭子の成長なので、本格的な時代劇を求める人には合わないんじゃないかと。反面、「時代劇は見たことがないけど、興味ある」という人が入門編として見るにはいい作品だと思います。

このレビューにはネタバレが含まれますので、閲覧にはお気をつけください。

あらすじ

時は1582年。天下統一を目前に控えていた織田信長(堤真一)は蘭丸(濱田岳)、大塚(田口浩正)ら少数の家臣団と共に京都・本能寺に滞在している。冷酷非道なお館様を前に、戦々恐々とした日々を過ごす家臣たち。そんな時、風変りな女(綾瀬はるか)が一人、寺に迷い込んでくる。噛み合わない会話を繰り広げているが、その女・繭子は400年後の未来から来たと言う。泊まっていたホテル(本能寺ホテル)のエレベーターが1582年と繋がっていると・・・。
繭子は自身も訳のわからぬまま信長と小姓・森蘭丸との交流を深める中で、次第に信長の人間性に惹かれていく。やがて繭子は、1582年の迷い込んだその日が「本能寺の変」が起きる前日である事に気づき—

出展:Filmarks

「歴史ミステリー」ではない

綾瀬はるか演じる繭子は、勤め先が倒産し、無職になったところで恋人からプロポーズされ、何となく結婚に向けて進んでいるものの「これでいいの?」というモヤモヤとした思いを抱えています。そんなとき1582年にタイムスリップし、「天下統一」を目指す織田信長に会って、自分の「やりたいこと」や「すべきこと」を見つめなおします。

現代パートでは京都の観光地が次々と登場し、さながら「綾瀬はるかが旅する京都」といった感じ。戦国パートも小難しいセリフなどはなく、織田信長も森蘭丸も現代的な喋り方をします。

本格派の時代劇だと、時代背景を理解するのが困難だったり、聞き取れなかったりしますが、この作品にはそれがありません。

何より主軸が現代なので、時代劇としては「ものすごくライト」です。私も最初は、「本能寺の変」の謎に迫る歴史ミステリーだと思っていたので、観賞後の感想は「想像してたんと違う」でした。賛否両論を生んでいるのは、この部分なんじゃないでしょうか。

やや古くさい設定のヒロイン

ヒロインはキャラクターが薄めで、これといって語りたくなる要素がありません。ただ、ありがちな現代の若者を描いているように見えて、ちょこちょこ古くささを感じるのが気になりました。

たとえば、繭子が「教員免許を持っている」と話すと「教師は余っている」といわれるシーン。2000年代はじめの頃ならいざしらず、この映画が公開された2017年はすでに教員不足が問題視されていました。

参考:いわゆる「教員不足」について(文部科学省初等中等教育局)

さらに、会社が倒産して将来に不安を抱えているという状況に、「イケメンかつエリートな彼氏が結婚を申し込んでくる」という巨大なアドバンテージを与えるというのが、昔のトレンディドラマみたいだなぁと。

2017年の観客を、この程度の行き止まりで共感させるのは困難ではないかと感じました。

評価ポイントは「不思議な織田信長」

ここまで読んでくださった方はもうおわかりだと思いますが、私はこの映画をあまり高く評価していません。それでも感想を書いたのは、1つだけ妄想力を刺激されるポイントがあるからです。

それは「信長も実は未来から来た人なのでは?」ということ。

繭子の存在をすんなりと受け入れる柔軟さもさることながら、「未来から来たののだろう」と言い当てるのも、理由のひとつです。

何よりも彼は、時代の流れの中で自分が果たす役割を全うしようとしているんですよね。歴史の中で、自分が果たすべき役割がわかっている。個人の野望うんぬんではなく、歴史の大局を俯瞰しているのです。

そんな姿を見て、未来から来た誰かが信長の役割を得て、歴史の歯車を回そうとしているのでは?と感じたわけです。

これって考えようによっては、「自分」のままタイムスリップするよりはるかにおもしろいのではと思います。

自分が信長だったら、「本能寺の変」起こさせるか?阻止するか?想像するとめちゃくしゃワクワクします。

「転生したら織田信長だった!」みたいな作品があってもいいと思うんですよ。あるんでしょうかね。あるなら見てみたいです。

本能寺ホテル
監督:鈴木雅之
脚本:相沢友子
出演:綾瀬はるか/堤真一/濱田岳/風間杜夫