【Amazonプライム・ビデオ】マスカレード・ホテル―仮面は多くを語らない
- 2020.03.13
- 映画
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「マスカレード・ホテル」がAmazonプライム・ビデオで配信されると知って、驚きました。まさかジャニーズ事務所所属タレントの主演作がインターネットでこんなにも早く配信されるとは。時代は変わってきているということでしょうか。
東野圭吾の小説を原作とするこの映画、主演は木村拓哉と長澤まさみです。木村拓哉氏の主演作では「今度のキムタクはどんな職業を演じるのか?」が注目されがちですが、この映画も例外ではありませんでしたね。
今回、木村拓哉氏が演じるのは「潜入捜査のためにホテルマンに扮する新田浩介刑事」。連続殺人事件の現場に残されたメモから、次の殺人が起こるのが「ホテル・コルテシア東京」であることがわかり、ホテルマンに化けて捜査を開始します。そこで新田刑事にホテルマンとしての教育をたたき込むのが、長澤まさみ演じるホテルのフロントスタッフ、山岸尚美です。
あらすじ
都内で起こった3件の殺人事件。すべての事件現場に残された不可解な数字の羅列から、事件は予告連続殺人として捜査が開始された。警視庁捜査一課のエリート刑事・新田浩介(木村拓哉)はその数字が次の犯行場所を示していることを解読し、ホテル・コルテシア東京が4番目の犯行場所であることを突きとめる。しかし犯人への手掛かりは一切不明。そこで警察はコルテシア東京での潜入捜査を決断し、新田がホテルのフロントクラークとして犯人を追うこととなる。そして、彼の教育係に任命されたのは、コルテシア東京の優秀なフロントクラーク・山岸尚美(長澤まさみ)。
出展:Filmarks
次々と現れる素性の知れない宿泊客たちを前に、刑事として「犯人逮捕を第一優先」に掲げ、利用客の“仮面”を剥がそうとする新田と、ホテルマンとして「お客様の安全が第一優先」のポリシーから、利用客の“仮面”を守ろうとする尚美はまさに水と油。お互いの立場の違いから幾度となく衝突する新田と尚美だったが、潜入捜査を進める中で、共にプロとしての価値観を理解しあうようになっていき、二人の間には次第に不思議な信頼関係が芽生えていく。そんな中、事件は急展開を迎える。追い込まれていく警察とホテル。果たして、仮面(マスカレード)を被った犯人の正体とは・・・。
品行方正なホテルの「素顔」
私がこの映画で1番好きなシーンは、冒頭にホテルのバックヤードで新田が髪を切るように促されるところです。ここで登場する「社員理容室」は、カットのみなら1200円とかなりリーズナブルな値段設定。ごちゃごちゃしたバックヤードには、理容室のほかに「従業員専用販売所」やマッサージを受けられるっぽいリラクゼーション施設があります。
この、普段は品行方正な顔しか見せない「ホテル」という存在の素顔を垣間見せるシーン、ぐっと引き込まれます。それに加えて詰め込みっぷりが昔バイトしていたデパートのバックヤードと似ていて、なんだか懐かしくなりました。
高級品やブランド品が並ぶデパートも、裏はあんな感じなんですよね。従業員食堂できつねうどん食べたり、売れ残って値引きされたおだんごを買ったりした当時を思い出します。
このバックヤードの描写がどれくらいリアルなのかはわかりませんが、たぶん現実に近いものがあると思います。こういう素の顔を見せられると、それが人間じゃなくても惹かれてしまう。
さらにここで、完璧なホテルウーマンである山岸さんが新田刑事に向ける、ゴキブリを見るような表情がたまりません。
立場が違うからこそ見えるモノがある
捜査を開始した新田刑事の前に現れるのは、ホテルから金をせしめようとする男やクレーマーや結婚式を控えた花嫁やらといったホテルの「お客さま」。男臭い刑事の世界からいきなり飛び込んだ新田にそんな人たちの相手が務まるはずもなく、トラブルになりそうになると山岸さんが助けてくれます。
その一方で、新田が刑事らしい疑り深さで悪質な客のたくらみを暴き、それがホテルや山岸さんを救う結果にも。
新田刑事と山岸さん、それぞれが持つ「刑事の目線」と「ホテルスタッフの目線」が少しずつ交差して、お互いに影響を与え合い、トラブル解決の糸口になっていく。異色のバディがお互いに距離を近づけていく描写は、なかなか爽快感がありました。
主役をとりまく登場人物も個性が立っていて、観ている途中で「これ誰だっけ?」と迷うことがないのも、万人向けミステリーとしてかなり高得点。一つひとつのエピソードが平行しつつ繰り広げられるので物語が縦にも横にも広がり、133分があっという間に感じられます。
本当に怖いのは…?
物語が進むにつれ、2人は少しずつ真実に近づいていきます。この作品は原作未読で鑑賞したので、犯人と犯人の標的がわかったときは「えっ!」という驚きがありました。
ただ、この物語で怖いのは、殺人を企む犯人だけじゃないのです。 一度芽生えた負の感情は簡単には消えない。 さらに、どんな聖人でも、どこで誰から恨みを買うかはわからない。 新田刑事も、お客さまと従業員という立場を利用され、数十年前のことで理不尽な追い詰められ方をします。
自分の不幸を誰かのせいにすれば、それは理性を失わせ判断を誤らせる呪いになる。
このあたりの人間のドロドロした心情をもっと同情的に、もしくは恐ろしく描けば、また違った雰囲気の作品になったでしょう。ただ、キャスティングからしてどう考えても王道を狙っている作品なので、犯人側の描写はわりとあっさりしています。
「仮面」と「素顔」の狭間で
タイトルの「マスカレード」とは仮面舞踏会のこと。この「マスカレード・ホテル」には、「ホテルマン」という仮面をかぶった新田刑事のほか、素性を偽ってホテルに出入りする「お客さま」がたくさん出てきます。その一方で、逆に「お客さま」の仮面をタテにして、いつもは隠している本性をむき出しにする人もいます。
ホテルって、 誰も自分を知らない、ある意味非日常の場所。でも、どんな高級ホテルにもごちゃごちゃしたバックヤードがあるように、誰にでも素顔があります。
この映画の1番の見どころは、登場人物が本当の姿をさらけ出す瞬間でしょう。顔をしかめたくなるような素顔もあれば、思わず同情してしまう素顔もあります。
グランド・ホテル形式の作品ですので、主演の2人をのぞくキャストの登場時間は短めです。しかし、脇役も適材適所な俳優さんが揃っているので、最初から最後まで楽しめました。
マスカレード・ホテル
監督:鈴木雅之
原作:東野圭吾
出演:木村拓哉/長澤まさみ/小日向文世/渡部篤郎/石橋凌
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