【Amazonプライム・ビデオ】THE 有頂天ホテル―みんな、ドン・キホーテ
- 2020.05.08
- 映画
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三谷幸喜が監督・脚本を担当した、2006年公開のコメディ映画です。
この作品は、現実と映画の中の時間が同じ速さで流れるのが特徴。映画の上映時間が2時間10分、映画の中で描かれるのも大みそかの2時間10分。三谷さんの本拠地である、「ステージ」っぽいつくりともいえますね。
舞台となる「ホテルアバンティ」は都内の高級ホテルという設定ですが、余計なことばかりして遊んでいる総支配人の影響が大きいのか、雰囲気はかなりユルめ。カウントダウンパーティで使う大切な垂れ幕も、発注ミスで「謹賀信念」となってしまうなど、やや緊張感に欠ける様子が見て取れます。
グランド・ホテル形式の群像劇であり、シーンに応じてさまざまな人にスポットが当たるこの作品。個人的には、変わった役柄を演じることが多い香取慎吾氏がベルボーイのバイトをするごく普通の青年で出てくるのが高ポイントです。
2020年5月7日現在、Amazonプライム・ビデオで視聴できます。
あらすじ
都内の高級ホテル“ホテルアバンティ”。新年のカウントダウンパーティーまであと2時間あまり。その成否はホテルの威信に関わり、これを無事終えることが副支配人の新堂平吉に課せられた責務。ところが、そんな新堂をあざ笑うかのように、思いも掛けないトラブルが次々と発生する。刻一刻と新年のカウントダウンが迫る中、従業員と“訳あり”宿泊者たちを襲う数々のハプニング。はたして彼らは無事に新年を迎えることができるのか?
出展:Filmarks
主役のいない物語
この映画の登場人物は、それぞれになんらかの悩みや隠しごとを抱えています。
でも、それに対して周囲の人が寄り添ったり、親身になったりはこれといってしません。誰もがわりと自分のことでイッパイイッパイだから。
関わりはあるけれど、深入りはしない。この現実的な人間関係の描写がめちゃくちゃうまいんですよね。映画やドラマだと、主人公がやたらと人に助けてもらえたり、心の機微を読み取ってもらえたりしがちなのに。
でも、この映画には主人公と呼べる人がいないので、特別な誰かだけが得するようにはできていないのです。
甲本ヒロトの歌があるから成り立つストーリー
そんな登場人物たちを結びつけるのは、甲本ヒロト氏の「天国うまれ」という歌です。劇中では香取慎吾氏が歌っています。
歌詞はこちら→うたまっぷ 甲本ヒロト「天国うまれ」
シンプルなメロディと、繰り返される「ドンキホーテ サンチョパンサ ロシナンテ & 俺」のフレーズが印象的で、1回聴くだけでめちゃくちゃ耳に残ります。このへんは文章では伝えきれないので、ぜひとも実際に映画を観るなり曲を聴くなりしてみてください。
自分にしか見えない風景がある
ドン・キホーテとは、言わずとしれた物語の主人公で、風車を巨人だと思い込んで突撃する自称・騎士。一般的にはこれ、笑い話です。
でも、他人から見たら風車でも、本人にとっては「闘うべき、克服すべき巨大な敵」なんですよ。
この敵は自分にしか見えないので、人からは滑稽だとか、おかしいと思われるかもしれません。でも、立ち向かわなくてはいけない。
この映画の登場人物は、誰もが自分の目の前にある巨大な何かと闘っているドン・キホーテなんです。それは、叶わない夢だったり、理想と現実のギャップだったり、世間だったりといろいろです。
自分にしか見えないものとの闘いのさなかにも、誰かの何気ない言動が救いになるときがある。思わぬ人が力を貸してくれることもある(力を貸す側に自覚があるかどうかは別にして)。
こういうことがあるなら、人生も悪くないのかもしれません。
さらに、この映画が上質なコメディとして成り立っているのは、「それ、ただの風車じゃん」という他人の目がしっかり入っているから。
悩みとか迷いって、他人からみたら取るに足らないものだったりするんですよね。風車に立ち向かうドン・キホーテの滑稽さがちゃんと盛り込まれている、というわけです。
どうしても気になること
中盤で慎吾ちゃんが飲んでるカフェオレ、器だけで中身入ってなくない?
THE 有頂天ホテル
監督・脚本:三谷幸喜
出演:役所広司/戸田恵子/香取慎吾/松たか子/佐藤浩市
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