【Kindle Unlimited】「刑務所いたけど何か質問ある?」―人は慣れる、たとえそこが刑務所でも【漫画】
ホリエモンこと堀江貴文氏が獄中出版した手記3冊のマンガ部分のみを集めた本です。絵は写実的でありながらコミカルかつデジタルならではのかっちりした雰囲気で、さらっと読めます。
「ホリエモンは刑務所に入って、すごくやせて出てきた」くらいの認識しかなかった私。高齢者や体が不自由な受刑者のお世話係だったということを初めて知りました。刑務所では介護も自給自足なのね。
刑務所でも作業の熟練度によって報奨金(お給料的なもの)のランクがあるとか、優等生だと面会の回数が増えるとか、刑務所によって食事の味に差があるとか、へぇ~という感じでした。
ノンフィクションだけど
やっぱり、刑務所の中のことって「よそごと」なんですよね。
この本を読んだのも単純な興味と好奇心からでした。私は割と「なんでもとりあえずやってみたい」派なんですが、刑務所暮らしをしてみたいとは思わないし、するとも思ってない。だから「へぇ~そうなんだ~知らなかったな~」といった感想で終わってしまう。想像するとしても「差し入れする立場」で、どうしても塀の中に入った自分を想像できない。
これは想像力の限界なのか、それとも驕りなのかと問われたらたぶん両方でしょう。人生には何が起きるかわからない、と言いつつ、刑務所に入ることは想定していないわけですから。
しかし、この本は、刑務所暮らしがどんなものか、ということ以外にもすごくたくさんのことを伝えてくれます。
慣れることは必要、しかし危険でもある
人は環境に慣れること。慣れてしまえばそこに快適性や幸福を見いだせること。それは精神の安定をはかるために必要なスキルだけど、停滞も生んでしまう。刑務所暮らしに慣れてきて、そんな自分に「イカン!」と言えるホリエモンは立派だと思います。受刑者だけど。
それにしても、受刑者になる前は、毎日おいしいものを食べたりGLAYのTERUの前で本人の曲を歌ったりと、想像もつかないようなきらびやかな生活をしてきたホリエモンですら、刑務所では「お菓子うれしい!麦茶冷たくておいしい!」 ってなるんだな。というのは、けっこう衝撃でした。
「刑務所、そんなに悪くない」
この本を読むとそう思えてくるのです。これは、著者のホリエモンがポジティブで、どこか刑務所暮らしをおもしろがってる雰囲気があるからなんですが。
しかし、畳の上で寝られて、3食食べられて、毎日じゃないけど風呂にも入れて、おやつも出る。テレビも録画だけど観られる。新聞も読める。なにより所内なら一人じゃない。仕事も(むちゃくちゃ賃金安いけど)ある。運動もできる。
ここに慣れてしまうと、一度出所した人が行き詰まって「戻りたい」と思っても仕方ないのでは?とも思えてきます。
あと、刑務所でも人間関係はおもしろい。ホリエモンが配属された衛生係のトップは、超いいひと!って書いてあったけど、刑務所に入ってる性犯罪者だよ?
悪とはなんなのか。吉田修一先生の小説「悪人」を思い出したのでした。
差し入れ屋の存在を知る
GLAYのTERUが差し入れ買ってくる!とダッシュするシーンがあったので、そういえば受刑者への差し入れはどこで売ってるんだろう?刑務所内に専用の売店とかあるのかな?と思って調べてみました。
そうしたら、各刑務所や拘置所の近くには「差し入れ屋」という差し入れ可能な品をたくさん取り扱っている商店があるとのこと。なるほど~、差し入れできる品物とできない品物が厳しく決められているから、そういうノウハウを持った店が便利なんですね。きっと。
5000円預けておいて「これで◯◯さんに3カ月間お菓子差し入れしといて」みたいな使い方ができるという情報も見かけました。こういうお店でバイトしてみたい。
差し入れ屋の実態については@nifty:デイリーポータルZ:差し入れ屋さん見学が詳しいです。
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