【本】「「終活」のすすめ」―ひと言からできる終活

【本】「「終活」のすすめ」―ひと言からできる終活

「終活」のすすめ―自分で出来る人生のしめくくり
著者/市川愛
出版/太陽出版

この本がいうところの「終活」は、ほぼ「お葬式の手続き」のことなので、「自分のお葬式を決めておきたいけれど、何をしたらいいのかわからない」という方や、「そろそろ家族の葬儀のことを考えないといけないけど、まずどうしよう?」という方には参考になるんじゃないかと思われます。

さらに半分くらいはお葬式にかかるお金の話。葬儀業者の広告の見方、葬儀費用の内訳、よくあるトラブルなどの紹介。やっぱり葬儀でいちばんの関心はお金なのだな~、と実感できる内容です。

この手の本のなかではわりと読みやすいほうなので、さっくりと葬儀の知識を得たい人におすすめできます。

しかしながらこちらの本で得られる一番の真実は、冒頭にあった実母がお亡くなりになったお話のなかにあると思います。筆者は実母のお葬式を出した際、「これで喜んでくれたのか?」という疑問を抱いたとありました。

もし、母が生前「ピンクのユリを一輪で良いから飾ってちょうだいね」と言ってくれていれば、「希望を叶えてあげられた」という事実が生まれ、こんな疑問は抱かなかったでしょう。これは生前のたった一言さえあれば防げた後悔だと思うのです。

出展:「終活」のすすめ―自分で出来る人生のしめくくり/市川愛

「大事な人の最期の望みをちゃんと叶えてあげられた」という事実は、この世に残る人に大きな充足感を与えてくれるもの。

わたし自身にも経験があります。今は亡き祖母が元気だったころ、「遺影の写真はこれを使ってちょうだい」と頼まれていたのです。祖母には実の子(わたしの親やおじおば)もいるのに、なぜ遺影のことをわたしに頼んだのかを知ることはできませんでしたが、祖母が亡くなったとき、無事その願いを叶えることができました。本当によかったといまも思っています。

遺影に使った写真はいまも覚えています。きれいに咲いたバラの前で撮ったスナップ写真でした。

残された人のために、一言でいいから希望を伝える。それが終活の第一歩であり、核なんじゃないかと改めて思わせてくれる1冊でした。